【第2回】文科省が違反法令を特定できないワケ(後編)【No pain No gain】
- 前提:解散請求の要件
- 解散請求には「法令要件」と「違反要件」の両立が必要
- 法令要件…どの法令に違反したかを特定すること
- 違反要件…実際に当該法令に違反していること
- 文科省の立場と陥穽(おちい)
- 法令要件の解釈対立
- 従来の裁判所:民法を含まない「限定説」を採用 → 旧統一協会には適用できず解散請求不可
- 文科省:民法も含む「現定説」をとるしかない
- 違反要件の行き詰まり
- 文科省が根拠とする民法709条(不法行為による損害賠償規定)は「禁止命令規範」ではなく、そもそも“違反”が成立しない条文
- 「民法709条違反」と称しても、条文上どこに違反するか指摘できず、違反要件を満たせない
- なぜ民法709条は“違反”と呼べないのか
- 法律の性質の違い
- 民法:私人間の利害調整を目的とする「任意規定」 → 国家の罰則付与規範ではない
- 刑法(例:殺人罪99条):国家対私人の関係を規律し、禁止命令・罰則を付与
- 最高裁判例の役割分担
- 民法709条は「既発生損害の金銭賠償による原状回復」を目的とし、将来の禁止や抑止は刑事法の役割
- 不法行為の再発防止・制裁は刑法(罰則)に委ねられる
- 「どちらを立ててももう片方が立たない」論理的袋小路
- 【法令要件を広く解釈(現定説)】→ 民法709条を含め可としたが → 違反要件を満たせず×
- 【違反要件を別の基準(例:公共秩序違反)で認める】→ 違反要件クリアも → 法令要件(民法709条のほかに具体法令を特定)を満たせず×
- 現状と結論
- 文科省は1年以上にわたり「何に違反したのか」を明確に特定できず、解散請求を進めている
- 法令要件・違反要件を同時にクリアできないため、論理的に解散請求は認められない
- 文科省の法律論の破綻は致命的であり、今後の動向を注視すべき