後藤徹氏の勝訴までの道程:12年5か月の監禁と信教の自由を求めた闘い(要約)
1. 拉致監禁の過酷な実態
後藤徹氏は、31歳から44歳までの12年5か月にわたり、旧統一教会(現・家庭連合)の信仰を理由に家族や反カルト団体によって拉致監禁され、強制的に信仰を棄てさせられようとしました。監禁中、人間として扱われず、精神的・肉体的に大きな苦痛を受け、30代という貴重な時間を奪われました。
このような拉致監禁事件は1966年以降、58年間で約4300件発生しており、そのうち70%が信仰を棄てさせられたとされています。監禁中に自殺した信者や、逃亡を試みてマンションから転落し記憶喪失になった被害者もいました。
2. 家族と反カルト活動家の関与
後藤氏の監禁には、実の兄妹、そして日本同盟キリスト教団の牧師・松永泰や、脱会活動家・宮村峻が深く関わっていました。監禁された後藤氏は、信仰を放棄するまで解放されない状況に置かれていました。解放後、後藤氏はこの行為が宗教迫害であるとして、刑事告訴しましたが、不起訴処分となりました。
3. 民事裁判での勝利と社会への影響
刑事告訴が認められなかった後藤氏は、2011年に民事訴訟を提起しました。2014年1月28日、東京地方裁判所は監禁の事実を認め、後藤氏に対する重大な人権侵害があったとして、家族と宮村被告に計約2200万円の損害賠償支払いを命じました。
さらに同年11月、東京高等裁判所も同様の判決を下し、監禁による強制脱会は「社会的に許されない違法行為」であると明言しました。2015年9月29日、最高裁が被告側の上告を棄却し、後藤氏の全面勝訴が確定しました。この判決により、家族であっても信仰を理由に監禁して脱会を迫る行為が違法であることが司法の場で確定しました。
4. 国際社会からの批判と日本政府の対応
後藤氏の拉致監禁事件は、2008年以降、アメリカ国務省の「国際宗教自由報告書」に毎年取り上げられ、日本が信教の自由を守るための対応を怠っているとして批判されました。しかし、日本政府は長年にわたりこの問題を放置し続けました。
5. 安倍元総理暗殺後の社会的反動
2022年7月、安倍晋三元総理の暗殺事件以降、旧統一教会への世間の風当たりが急激に強まりました。この状況下で、後藤氏を監禁した家族や宮村氏がテレビ番組に出演し、旧統一教会を批判する姿が放送されるという、加害者が被害者を非難する矛盾が生じました。
後藤氏はこれに対し名誉毀損で訴訟を起こし、2025年1月31日、東京地方裁判所で宮村氏に対する賠償命令が下されました。
6. 後藤氏の訴えと今後の課題
後藤徹氏は、自身の信仰を守るために自由を奪われた経験を通して、信教の自由の尊さを訴え続けています。
日本における宗教的少数派に対する迫害問題が国際的にも注目される中、後藤氏は「拉致監禁・強制棄教という人権侵害をなくし、信教の自由が守られる社会をつくることが、今後の自分の使命である」と述べています。