目次
■3行要約
山上裁判を通じて、安倍元首相銃撃事件は「政治的動機がなくても成立するテロ」であることが専門家により明確化された。
しかし日本社会とメディアは3年半にわたり「被害者ナラティブ」や感情的物語を優先し、事実検証を怠ってきた。
本件は、ナラティブが人と社会を動かし得る危険性を示す、歴史的教訓として検証されるべき事例である。
■階層的要約(構造整理)
1. 問題提起:なぜ「テロ」と言えなかったのか
- 安倍元首相銃撃事件は当初「個人的怨恨」「宗教被害」「同情すべき事件」として語られた
- 専門家が「テロ事件」と明言するまで 3年半 を要した
- その遅れ自体が日本社会の異常さを示している
2. 裁判で明確になった事実
- 山上被告は
- 教団への恨みを語りつつ
- 「安倍氏を狙った理由は本筋ではない」と供述
- それでも
- 行為の手段
- 社会的・政治的影響(政府・世論が実際に動いた)
→ 結果としてテロの要件を満たす
3. 専門家の見解(福田充教授)
- 政治的動機が明確でなくても
目的達成のために暴力で社会に影響を与えればテロ - 家庭環境への同情余地はあっても
殺害行為の正当化は許されない - 教団問題と殺害行為は切り分けて考えるべき
4. メディア・ナラティブの問題点
- メディアは
- 「被害者家族(妹)」証言を軸に
- 感情的ストーリーを優先
- 反抗時の事実・合理的検証が軽視された
4-1. 柳内一郎弁護士の批判
- 妹は事件前、長期間兄と疎遠
- 刑事責任上重要なのは「反抗時の事情」
- ストーリー重視でファクト検証が不足
5. 「希死念慮」と物語化(ナラティブ化)
- 山上被告は
- 偶然を「運命」と解釈
- 自身の人生を過剰に物語化
- 「死にたい」という心理が
→ 行為を意味づけるナラティブを形成した可能性
6. ナラティブを補強した情報環境
- 山上被告が頻繁に閲覧していた特定サイトの存在
- 安倍氏と教団を結びつける
“橋渡しとなる言説” がどこから生まれたのか - その問い自体が、長期間タブー視されていた
7. メディア構造の根本問題(石戸諭氏の指摘)
- メディアは
- ストーリーに合う事実だけを選びがち
- 取材していても
最初のバイアスがすべてを回収してしまう - これは「人間的」だが、報道としては致命的
8. 核心的教訓
- 人を殺したのは銃だけではなく
人を導いたナラティブそのもの - ナラティブは
- 個人の行動
- 政治判断
- 社会世論
を実際に動かした
9. 結論:歴史的教訓として残すべき理由
- 事実と物語を混同した社会の失敗例
- 同様のナラティブが再び生まれれば
同じ過ちが繰り返される - 今後は
- 「それは事実か?」
- 「誰の物語か?」
を問い続ける必要がある

